タングステンの熱処理

ハロゲンランプの知識

前項で「2次再結晶」という言葉を使用しましたが、これは結晶粗大化とも言われる現象です。

タングステンは極めて融点が高く、しかも溶融して作ったタングステン塊は硬く脆いので加工が困難です。

そのため、タングステン線材は粉末冶金という方法で作られます。これはタングステンの粉末を固めて熱処理したもので、セラミックなどの製造方法に似ています。

この方法で作られたタングステンは細かい結晶の集積であり、この結晶間が滑ることにより比較的柔軟性があり、コイル巻きなどの加工もできます。

ただし、やはり脆いので、加工時には400℃~700℃に加熱しながら行う方が良い。間接加熱ならば当社の熱風ヒーターABHシリーズなどが適します。またコイリングマシンにはタングステン線に通電加熱しながら巻く機能が付いているのが普通であり、これを利用すれば安全にコイリングできる。加熱無しで巻くと切れやすいし、切れないまでもクラックを内在している場合があり、ランプ品質的にはこの方が問題です。

このようにして成形されたタングステンコイルは、細かい結晶の集合(多結晶構造)です。これが2000℃前後の温度になると細かい結晶が融合していき、一気に(1秒間程度)数万倍に成長して大きな結晶となります。この過程(2次再結晶)が起こっている間は非常に流動的となり、タングステンコイルに自重も含めて少しでも力が加わっていると、その方向に大きく変形します。2次再結晶が終了すればコイルは硬く脆くなり、高温強度も比較的高くなります。

つまり2次再結晶が終了するまでの1秒間程度は極めて流動的で変形しやすいので、この間、変形しないように何らかの方法で支えておく必要があります。その方法が前記したような方法です。

またこの2次再結晶のさせ方にも注意しなくてはなりません。同じタングステン材料でも急激に2次再結晶させたものとゆっくり2次再結晶させたものでは、再結晶後の結晶構造が異なります。ゆっくり2次再結晶させたものは結晶粒が長大になり、耐高温クリープ性が良好です。

高温クリープとは、高温で時間経過と共に加重方向にゆっくりと変形していく現象。主に結晶粒界の滑りに起因し、粘弾性変形とも言われる。フィラメント点灯中は非常な高温なので、フィラメントには高温クリープ現象が起こり、時間と共に自重で垂れ下がっていきます(業界用語はサグ)。この現象は問題になる品種とそうでもない品種があります。フィラメントの支持具間電圧でほぼ決まり、この電圧が20v以下であれば、ほとんど問題ありません。これが50v程度になると問題が出始め、100v前後では大問題になります。それ以上の電圧では、ほとんどランプは作れません。

耐高温クリープ性に問題があり、変形が大きくなっていくとコイルのピッチ間ショートでフィラメントが断線したり、石英バルブに接近しすぎて石英バルブが変形したり、ハロゲンサイクル異常で黒化したりといった各種トラブルを起こします。そのためにも2次再結晶のさせ方は重要です。

この耐高温クリープ性の良いフィラメントを作る熱処理方法を一般化して言えば、2次再結晶開始温度付近で10秒間程度保持し、その後2次再結晶開始温度+300℃程度まで上昇させて1秒間以上保持し、完全に2次再結晶を終了させて終了する方法です。

タングステン線が2次再結晶してできる結晶の形で耐高温クリープ性が大きく異なります。一般的には線の方向にからみあった長大な結晶ができるものが良いとされています。この様な結晶を作る上で重要なのはタングステンの製造工程で微量のカリウムその他を添加することです(ドーピング)。ハロゲンランプ用のタングステン線はほぼ例外なくドーピングされたタングステン線です。この線材を使うと共に前記した2次再結晶のさせ方に注意して製造するとフィラメント変形の少ない優秀なハロゲンランプが作れます。

ただしドーピング量が多くなると2次再結晶開始温度が高くなる傾向があります。過大にドーピングされてしまったタングステン線は2200℃といった高温でも2次再結晶が完全には終了せず、ランプになって点灯すると変形を始めるものもあります。このように性能,品質を安定させるにはドーピングの質,量共に重要です。

このドーピングにより混入されたカリウム等の微量元素は良好なタングステンの結晶構造(からみあった長大結晶)を作ると共に結晶粒界に集まり、微小な気泡を形成します。これは結晶粒界の滑りを防止し、フィラメントの高温クリープを抑えます。

しかしこのドープによる気泡は長時間経過すると次第に集合し、大きな気泡をフィラメント内部に形成するようになります。これはランプ寿命を制限する要素になりまが、ハロゲンランプの封入ガスは高圧なのでこの気泡(ドープ孔)の成長拡大を抑制します。この点でも高圧の封入ガスはランプの長寿命化に貢献していると考えられています。

尚、この気泡の中の不純物はそのうちランプ封入ガス中に火山の様に噴出しますので、封入ガスのハロゲンバランスが崩れ、黒化などの原因になり得ます(カリウムなどのアルカリ金属はハロゲンと強固に結合し、ハロゲンサイクルを阻害する)。点灯開始して数百時間経過後に発生する黒化はこれが原因の一つに上げられます。

また高温クリープ現象によるフィラメント変形はフィラメントそのものの性質だけで決まるものでもない事が分かっています。ランプ内に酸素や水を多く残留させてしまった場合、点灯中にハロゲンサイクルと共に後記するウォーターサイクルが起こり、フィラメント表面が激しく蒸発→,再付着を繰り返すためにタングステン線表面が変形に対して抵抗しなくなり、高温クリープ現象が大きくなることがあります。

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