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樹脂加熱の基礎知識-3 樹脂の種類-6 エラストマー

エラストマー

エラストマー

エラストマー(elastomer)とはゴム弾性を有する工業用材料の総称です。
elastic polymer(弾力のある重合体)の短縮形で1960年ころから使われ始めました。
一般的には、天然ゴムや古くからの合成ゴムなど、 いわゆる“ゴムらしい”ゴムを示す場合に「ゴム」を用い、「エラストマー」は、最近の熱可塑性エラストマーのように、プラスチックとの境界材料まで含む新素材に使用されています。

1.天然ゴム

ゴム樹液(ラテックス)→精製乾燥品(生ゴム)→硫黄を加えて弾性強化(加硫ゴム)→炭素粉末を加えて剛性強化(硬質ゴム)と変化します。
NR(Natural Rubber) と表記されることもあります。

2 熱硬化性エラストマー

(Thermosetting Elastomers)
ある一定の範囲において、熱を加えても軟化することが無く、比較的耐熱性が高いエラストマー。
一般に「ゴム」と呼ばれるのはこのタイプです。
製品名に「○○ゴム」(例ニトリルゴム nitrile rubber) とついているものが多く、初期の合成ゴムの大部分はこの範疇に含まれます。
ウレタンゴムの一部、シリコーンゴム、フッ素ゴム、などがあります。

3 熱可塑性エラストマー

(Thermoplastic Elastomers (TPE))
熱可塑性エラストマー(Thermoplastic Elastomers : TPE)は、 常温では加硫ゴム(すなわちエラストマー)の特性を示しますが、 高温になると塑性変形が可能となって、プラスチックの加工機で成型できる高分子材料と定義されています。
ISO18064:2003とJIS K6418で規格が有ります。
熱を加えると軟化して流動性を示し、冷却すればゴム状に戻る性質を持つので、熱可塑性エラストマーと呼ばれています。
TPEは加硫ゴムと比較して多くの特徴があり、 また、ゴムとプラスチックの中間的な性能を持っています。
TPEは、加硫ゴムの性能を持っているのに加硫を必要としません。
この理由は、TPEは必ず樹脂成分(硬化ブロック)とゴム成分 (軟性ブロック)からなっているためです。
2成分からなるTPEでは、室温付近で硬質ブロックが何らかの形で架橋点 (加硫点)のように塑性変形を防止する働きをしています。
その結果、TPEは弾性体(=加硫ゴム)としての性能を示します。
しかし、温度を上げると、硬質ブロックの樹脂成分は溶けて架橋点の働きが出来なくなり、 塑性変形して成形が可能になります。
射出成形によって迅速に成型加工を行なえる利点がありますが、熱によって変形するため耐熱性を要する用途には適しません。
スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系などがあります。

エラストマーの歴史

クリストファー コロンブス(Christophorus Columbus 1451年8月25日から10月頃 - 1506年5月20日)伝承:イタリアのジェノヴァ出身

クリストファー コロンブス(Christophorus Columbus 1451年8月25日から10月頃 – 1506年5月20日)伝承:イタリアのジェノヴァ出身

ゴムの由来

日本語で「ゴム」、漢字で「護謨」は、江戸時代の長崎の出島でオランダ語のgomから音訳された言葉です。
主に蘭学=西洋医学で使用する医療機器として知られていました。

今日のスペイン語と英語で gum、フランス語で gomme、ドイツ語で gummi などと一群の欧州言語で表記される物質は、
古代エジプト語のkema・kemaiがギリシャに渡りcommiとなり、更にローマに渡りラテン語のcummi・gummiが語源です。
古代や中世には、アルコールに不溶で、水を含ませると著しく膨潤してゲル状になり、種類によってはさらに水を加えると粘質のコロイド溶液となる植物由来の物質を意味していました。
逆に、水に不溶でがアルコールに溶ける植物由来の無定形の物質は、スペイン語でresina、英語で resin、フランス語で résine、ドイツ語で harz と呼ばれていました。

ゴムの木の発見

古来、南米にはゴムの木が自生しており、この木が傷ついたりして自然に樹液が流れる事があります。
その樹液が木の下で固まって野生ゴムになります。
これを昔から南米の人々は、遊びでボールとして使ったり水筒といったような簡単な器として用いたりしてきたようです。
コロンブスは1493年の第二回目の航海でプエルトリコとジャマイカに上陸し、(ハイチという説もあります。)子供たちが樹液から作った大きく跳ねるボールで遊んでいるのを見てとても驚いたといわれています。
欧州人が古くから知っていたゴムに似ていたので、南米産の物質もゴムと呼ばれました。
その後スペインに持ち帰られましたが、以後200年は、おもちゃとして使われてきました。

英単語rubberの語源

ジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley,FRS 1733年3月13日(旧暦) - 1804年2月6日)

ジョゼフ・プリーストリー(Joseph Priestley,FRS 1733年3月13日(旧暦) – 1804年2月6日)は、18世紀イギリスの科学者、自然哲学者、教育者、神学者、非国教徒の聖職者、政治哲学者、150以上の著作を出版した。
アンモニア、塩化水素、一酸化窒素、二酸化窒素、二酸化硫黄の発見で有名

鉛筆が発明されたのは1550年ころのイギリスです。
1770年、プリストリーがゴムには紙に書いた鉛筆の文字を消すことできるという性質を発見しました。
これが消しゴムの始まりです。そして、これは市販されるようになり”rub out(擦り消す)”と呼ばれました。
ゴムを意味する英単語”rubber”がここから派生して生まれました。
当時の識字率は約5%で文字や筆記用具を使用して言葉を記録できる人はごく少数でした。

ゴム引き防水布

チャールズ・マッキントッシュ(Charles Macintosh FRS 1766年11月29日 – 1843年7月25日)スコットランドの化学者

チャールズ・マッキントッシュ(Charles Macintosh FRS 1766年11月29日 – 1843年7月25日)スコットランドの化学者

1820年代後半、マッキントッシュによるゴム引布(マッキントッシュクロス)の成功で、ゴム工業はイギリスを中心に発展しました。
当時、雨の多いロンドンの街に馬車が行き交っていた時代です。
雨を防ぐには、布に油を染み込ませた外套ぐらいしかなく、人々は雨風をしのぐのに苦労していました。
そこで1823年、イギリス・グラスゴーのマッキントッシュは、2枚の生地の間に溶かした天然ゴムを塗り、圧着し熱を加えた防水布を発明しました。
そして、この革新的な生地で製作したゴム引布コートは全英中に衝撃を与え、乗馬用コートやレインコートとして瞬く間に広まりました。
ゴム引布コートは当時、人々の生活を一変させた最もクリエイティブで革新的なモノでした。
今でも英国では、レインコートの総称をマッキントッシュと呼び、偉大な発明者の名は歴史に刻まれています。

ゴムの加硫方法の発見

チャールズ・グッドイヤー(Charles Goodyear, 1800年12月29日 - 1860年7月1日)アメリカ合衆国の発明家。

チャールズ・グッドイヤー(Charles Goodyear, 1800年12月29日 – 1860年7月1日)アメリカ合衆国の発明家。

この当時のゴムは、夏は暑さでベトベトで、冬は寒さでカチカチといった具合で、温度の影響を受け易いという問題点がありました。
このレインコートの不具合を改善するため人々により多種の研究がなされてきました。

1839年、グッドイヤーが、硫黄による天然ゴムの架橋を発見しました。
研究室で寝てしまった彼のゴム靴に実験中に使っていた薬品がこぼれ、これがストーブで加熱され、翌朝目覚めた彼はゴム靴の弾性が増大している事に気付き発見しました。
この発見には、幾つか諸説あるようで、泊まっていたホテルで、硫黄を混ぜたゴムの切れ端をストーブの上に何げなく置き、しばらくして見てみると、熱によりベタベタになっているはずのゴムが革状になり、弾性力を持っている事に気付き発見したというエピソードも残っているようです。
いずれにしても、偶然により、硫黄によって硬くなり弾性を有する加硫ゴムは発見されました。
この大きな功績は今日でもアメリカにある世界最大のタイヤメーカー”グッドイヤー社”の社名として残されています。

ゴム靴・防水衣料・緩衝材・防振吸収剤など需要が徐々に増えていきました。
この他にも、電気絶縁性や耐久性などの特性を持つことがわかり、工業用材料としての価値は上がりました。

ゴム工業の発展

トーマス ハンコック(Thomas Hancock 1786年5月8日 – 1865年3月26日)イギリスの化学者

トーマス ハンコック(Thomas Hancock 1786年5月8日 – 1865年3月26日)イギリスの化学者

1843年、ハンコックはゴム加硫とはゴムと硫黄の化学結合からきていることを発見し、ゴムの加工と機械を開拓し種々の加硫方法を開発しました。
そして後に古代ローマの火の神VULCAN(ヴァルカン)にちなんで加硫を「Vulcanisation」と名付けました。

ジョン・ボイド・ダンロップ(John Boyd Dunlop, 1840年2月5日 - 1921年10月23日)アイルランド(スコットランド生まれ)の発明家。

ジョン・ボイド・ダンロップ(John Boyd Dunlop, 1840年2月5日 – 1921年10月23日)アイルランド(スコットランド生まれ)の発明家。

1888年、アイルランド人獣医師のジョン・ボイド・ダンロップは息子のジョニーから自転車をもっと楽に早く走れるようにするにはどうしたらいいと聞かれ、その時はただ、「練習しなさい」とだけ答えた。
しかし、ジョニーが自転車のタイヤを壊してしまった時に、あるヒントが頭に浮かんだ。
それは、タイヤの構造が動物のお腹と似ているということであった。
そこで、獣医としての知識を総動員し、ゴムのチューブとゴムを塗ったキャンバスで空気入りのタイヤを作り、木の円盤の周りに鋲で固定した。
これが世界初となる空気入りタイヤの発明であった。
1888年に特許を取得し、翌1889年に「The Pneumatic Tyre and Booth’s Cycle Agency, Ltd.」を設立した。

以降、ガソリン自動車の発明と共にゴムタイヤも開発されていきました。
利用価値の拡大とともに供給不足となり、価格は大暴騰しました。当時、ゴムは、南米アマゾン流域でのみ採取されていました。
そこで、イギリスは、ゴムの移植を考えます。植民地を持っていた東南アジア各地にゴム農園を作りました。こうして、ゴムのプランテーションは確立されていきました。

合成ゴムの歴史

合成ゴムの歴史の始まりは、天然ゴムの組成解明の化学的研究からです。
東南アジアに天然ゴム生産の拠点を持たず、生ゴムの入手に苦労したアメリカやドイツが中心になりました。
産業の発展(自動車工業など)や戦争などにより天然ゴムの需要は一気に増大していき、その中で合成ゴムの化学的研究は進められていきます。
実際に実用的に用いられる合成ゴムが製造されたのは、第一次世界大戦の時で、世界初の合成ゴムは、天然ゴムの生産地を持たないドイツの代替品を工業的に合成しようという試みの結果でした。

チャールズ H・G ウイリアムズ(Charles Hanson Greville Williams,1829年9月22日 - 1910年6月15日)イギリスの化学者 

チャールズ H・G ウイリアムズ(Charles Hanson Greville Williams,1829年9月22日 - 1910年6月15日)イギリスの化学者 

1860年、C.H.G.ウィリアムズによる天然ゴムからイソプレンの単離は、合成ゴムにとって画期的な出来事でした。
化学者がこの弾力性のある物質の鎖状分子が無数のイソプレン分子繊維で構成されていることを発見したのは 1905 年のことで、当時は分子繊維を架橋する方法を知る人は誰もいませんでした。

フリードリヒ・ホフマン(Friedrich Hofmann, 1866年11月2日-1956年10月29日)ドイツの化学者

フリードリヒ・ホフマン(Friedrich Hofmann, 1866年11月2日-1956年10月29日)ドイツの化学者

フリードリッヒ・ホフマンはゴムの架橋に挑戦しました。「天然ゴムモジュール」イソプレンの製造は難しかったため、化学構造が非常に似ており、簡単に製造できるメチルイソプレンを使用してすぐに解決しました。
ホフマンはこの原料をスズ製容器に入れ、加熱して待ちました。時には数か月も待ちました。

適用温度に応じて、スズ製容器で製造した物質は柔らかくなったり、硬くなったりはしましたが、常に弾力性がありました。
その結果、ホフマンはメチルゴム(メチルイソプレン)を発明しました。こうして、1909 年 9 月 12 日に、世界で最初の合成ゴムの特許が取得されました。
ホフマンは、「Elberfelder Farbenfabriken vorm. Friedr. Bayer & Co.」の研究室で研究をし、その会社の伝統は特殊化学品グループであるランクセス(Lanxess)によって今日も引き継がれています。

当時からすでに主要なゴム会社であったコンチネンタル社は、1910 年にこの新しい物質から最初の自動車用タイヤの製造を開始しました。
ホフマンの上司であったカール・デュイスベルグ(Carl Duisberg) は、そのタイヤで 4,000 キロを「パンクしないで」走行しました。
ドイツ皇帝も自分の車にこのタイヤを装着し、その結果に非常に満足しました。

そして、アメリカにおいて第二次世界大戦中に、GR-S(現在のSBR)の工業的生産が始まります。
この合成ゴムは、戦時下において大きく成長し今日の合成ゴムの基礎を築くこととなりました。

20世紀初頭において、天然ゴムが持たない諸性質を持った合成ゴムの研究開発は盛んになっていき、”汎用(はんよう)合成ゴム”、”特殊合成ゴム”や”高機能性合成ゴム””エラストマー”と発展していきます。

1934年、ドイツがSBR、NBRを製造開始。
1940年、アメリカでブチルゴムを開発。
1944年、ドイツのバイエルによってウレタンゴムが開発。
1945年、ゼネラルエレクトリック社がシリコーンゴムの開発。
1954年、DuPon社と3M社によりフッ素ゴムの製造開始。

熱可塑性エラストマーTPEの熱的性質(代表値)

熱可塑性エラストマーTPEの熱的性質(代表値)1

熱可塑性エラストマーTPEの熱的性質(代表値)2

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