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2-9.潜熱と顕熱と蒸発熱(気化熱)

物質の温度に顕れ観察できる熱=顕熱、物質の状態を変化させるが観察できない熱=潜熱。
顕熱+潜熱=全熱

物質の三態の相転移

転移前の相 転移後の相 現象の呼称 転移点の呼称 転移熱の呼称
気相(気体) 液相(液体) 凝縮(液化) (特になし) 凝縮熱
固相(固体) 昇華(凝固、凝結) (特になし) (特になし)
液相(液体) 固相(固体) 凝固(固化) 凝固点 凝固熱
気相(気体) 蒸発(気化) 沸点 蒸発熱(気化熱)
固相(固体) 液相(液体) 融解 融点 融解熱
気相(気体) 昇華(気化) 昇華点 昇華熱
※気体を液体に変化させるときの凝縮熱は、蒸発熱と絶対値が等しく、符号が逆になります。
※蒸発熱は物質に吸収される熱を表していて正、凝縮熱は物質が放出する熱であるので負の値をとります。

2-9-1.潜熱

潜熱とは、物質が固体から液体、または、液体から気体に相転移するときに必要とされる熱エネルギーの総量です。
潜熱には融解に伴う融解熱と、蒸発に伴う蒸発熱(気化熱)があります。

潜熱の概念はジョゼフ・ブラックが導入しました。
ブラックは1761年に氷が融解の時に温度を変えないで熱を吸収することを示し、熱素(カロリック)が氷の粒子と結びつくのだと考えました。
また、同体積の水と水銀の温度上昇に差があるという事実などから、熱容量や比熱の概念を生み出すなど、熱学の発展に貢献しました。

 

ジョゼフ・ブラック(Joseph Black, 1728年4月16日 – 1799年11月10日) は、スコットランドの物理学者、化学者。

2-9-1-1.融解熱

融解熱とは一定の量の物質が固体から液体に相転移する時に必要な熱量です。
単位はJ/gまたはJ/molで、氷の融解熱は333.5J/gです。

2-9-1-2.蒸発熱(気化熱)

蒸発とは液体状態の原子あるいは分子が十分なエネルギーを得て気体の状態になる過程です。
液体からの蒸発は沸点以下の温度で起こり、蒸気圧 が飽和蒸気圧になるまで続き、そこで液相平衡に達して終了します。

液体の温度が沸点に達すると、液体内部からも気化(沸騰)が起きます。
ここで、蒸発に際して、液体は周囲から蒸発熱(気化熱)を必要とします。

液体の表面張力(分子間力)に打ち勝つ熱運動エネルギーを持つ分子は蒸発することができます。
言い換えると、蒸発する分子は液体表面への付着についての仕事関数を超える力学的エネルギーをもっています。
したがって蒸発は液体の温度が高いほど、表面張力が低いほどより早く進行します。

蒸発に関与し、その系のエントロピーは増大しており、相変化に伴ってエネルギーの流入が必要とされます。
蒸発を継続させたり加速するには、ヒーターによる熱エネルギーの継続的な供給が必要になります。

たとえばヘリウムの蒸発熱が 0.0845 kJ/mol と極端に低いのは、ヘリウム原子間に働くファンデルワールス力が非常に小さいためです。
反対に水分子の間には水素結合が働いているため、蒸発熱は 40.8 kJ/mol と大きく、水を 0℃から 100℃まで加熱するときの熱容量(7.53 kJ/mol)のおよそ5倍の値となります。

蒸発熱の測定は沸点においてなされますが、通常は 298K (25℃) での値に補正された値が用いられます(補正による変化は測定誤差以下なので無視できます)。
単位は kcal/mol (キロカロリー毎モル)が用いられてきましたが、最近では kJ/mol (キロジュール毎モル)との表記が主流です。

なお、蒸発熱を分子間力の測定に用いる場合は注意が必要です。
分子間力は気相の物質にも働くため、実際よりも小さな値が測定されることになります。
特に金属の気体は共有結合の状態で存在しているため、分子間力の測定には原子化熱を測定する必要があります。

2-9-2.顕熱

顕熱とは物質の状態(相)を変えずに,温度だけを変化させるために費やされる熱量です。

例えば20℃の水をヤカンにいれて火に掛けます。
火から熱がヤカンに伝わり、20℃から60℃まで温度が上がりました。
このとき水が得た熱が顕熱です。

学術的な定義

「多数の分子などで構成されている系において、内部エネルギの増加と共に、系の温度も同時に上昇する時、この微視的な力学エネルギーを顕熱という」

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