4-3.熱風の温度と乾燥速度

4-3-1.熱風熱源の特徴

熱風の温度と湿度が一定な乾燥を定常乾燥条件と呼びます。
熱風の温度を変えると、熱風の相対湿度・比熱、密度、粘度、熱伝導も変化します。
熱風の温度を2倍にすると、熱伝達係数は83%に減少します。
従って温度が200%上昇しても効率は166%です。

4-3-2.熱源としての空気

空気が20℃1atmの定圧比熱は1.013J/g・K、比重は1.2047 kg/m3です。
これを1ℓに換算すると、重さ1.2047g、比熱は1.3J/K-Cpになります。

水蒸気も含まれていますが、乾燥工程の場合は、蒸気のまま推移し、
無視できるほど小さいので、式から省きます。

ヒートテック社製熱風ヒーター「型式 ABH-200V-3kW/29PH/+S」を使用して、
毎分200ℓの空気を常温から600℃に加熱したとすると

200ℓ x (600℃-20℃) x 1.3J/K = 150800J

600℃に加熱された200ℓの空気は150800J/min = 2513J/sの熱量を持ちます。

大気圧下で20℃の水を1g蒸発させるのには蒸発熱(潜熱)として2454J必要です。
600℃の熱風を毎秒3.33ℓ(毎分200ℓ)噴射すると、約60秒で蒸発します。

4-3-3.熱風ヒーターの加熱能力

必要電力 = P
流量F[L/min] = 1/60F[L/s] 空気の熱容量 = 1.01[J/g/K] 空気の密度 = 1.2[g/L] 空気の温度上昇値δt = T[K] ※Tは温度上昇値=熱風出口温度-空気入口温度

熱風ヒーターの熱効率 = η
大口径 η = 0.9 (補正係数は10/9=1.11)
中口径 η = 0.8 (補正係数は10/8=1.25)
小口径 η = 0.7 (補正係数は10/7=1.43)

F[L/min.]=1/60F[L/s]×1.2[g/L]=0.01666F[L/s]×1.2[g/L] = 0.02F[g/s] P[W=J/s]=1.01[J/g/K]×0.02F[g/s])×T[K] x η
P =1.01 x 0.02 x 200ℓ x (450-20)℃ x 1.11 = 1930W ≒2000W =2kW

熱風ヒーターの加熱能力

上記以外の表は下記のサイトを参照してください。

https://www.heat-tech.biz/products-nh/nh-gj/1257.html

ヒートテック社熱風ヒーター 出力一覧表

ヒートテック社熱風ヒーター 出力一覧表

4-3-4.加熱による気体の膨張

シャルルの法則によりPV=nRTですから

理想気体の状態方程式=pV=nRT
圧力p=1atm=101.3×10^5Pa
体積V=1m^3
モル数n=mol
気体定数R=8.31J/mol・K
温度t=273+C

20℃→300℃では体積は(273+300)/(273+20)=1.96≒2倍になります。
20℃→600℃なら(273+600)/(273+20)=2.98≒3倍になります。

4-3-5.キャリアガス=水分排出機構としての空気

熱風温度による飽和水蒸気量の変化

熱風温度による飽和水蒸気量の変化

水蒸気圧には気温で定まる最大値があり、この値を超える圧力では水蒸気の状態で存在できません。
この最大値を飽和水蒸気圧といいます。

Tetens(1930)の式 E(t)=6.11×10^(7.5t/(t+237.3)
により、指定した温度 t ℃における飽和水蒸気圧 E(t) hPaを求めます。
絶対湿度 a の値は、水蒸気の状態方程式から導かれる次式
a=217×e/(t+273.15) により求めることができます。

シャルルの法則により、空気は300℃なら1.96倍、600℃なら2.98倍に膨張します。
最大で、300℃では35.6g、600℃では359.6gの水を搬送できます。

1ℓの空気は300℃になると、体積1.96倍x水蒸気35.6g = 69.8gの水を搬送するキャリアガスになります。
1ℓの空気は600℃になると、体積2.98倍x水蒸気359.6g = 1071.6gの水を搬送するキャリアガスになります。

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