温度放射強度について

物体がある温度になると電磁波(~マイクロ波~赤外線~可視光~)の形で放射により放熱します。周囲よりも高温の物体から放熱される熱エネルギーの割合は、高温になるほど高率になり、500℃以上ではこの放射が大勢を占める様になります。500℃以下では対流や伝導による放熱が支配的です。

放射による放熱は物体の温度をT〔K〕、放射率を100%とすれば
P=5.68×10-12 ×T4[W/cm2] (ステファンボルツマンの式)

物体の温度に対する温度放射の量

ここで注意しなくてはならないのは、上記の値は特殊な状況(周囲温度が絶対零度の場合)での放射量だということです。実際には周囲温度が絶対零度ということはあり得ず、300K(27℃)前後とかの値であるのが普通です。

そこで周囲温度をT0[K]とした時の物体からの温度放射を表す様にステファンボルツマンの式を一般的な形にしたものが下式です。周囲温度というのは厳密には定義が難しく、この式も近似式だと思ってください。

P=5.68×10-12×(T4-T04)[W/cm2]

この式から分かるのは、物体温度と周囲温度の差がゼロであれば、温度放射エネルギーもゼロになります。周囲温度よりも物体の温度が低ければ式の値はマイナスとなります。これは物体に熱エネルギーが流入する事を意味します。

最初のステファンボルツマンの法則による放射式がまちがっているわけではありません。ある温度の物体からは[図-3]の放射が出ており、常温でも約300Kの絶対温度に相当する放射が出ています。ただし周囲温度が絶対零度でない限り、周囲からの温度放射を受けます。周囲温度が物体の温度と同じであれば差し引きゼロとなり、物体からのエネルギーの出入りは無くなります。

また(放射は温度の4乗に比例するため)物体の温度が周囲温度に比べて十分に高ければ、物体からの温度放射量は周囲温度の影響がほとんど無視できます。しかし物体温度と周囲温度の差が小さくなると周囲温度の影響は多大なものになります。

物体の温度に対する放熱量の実測データ

以下は実際のある物体の表面温度と、そこからの放熱量の実測データです。(室温は25℃)

物体とはφ1の鉄-クロム-アルミ線を十分な長さで外径φ23.5になるように密着巻きし、十分に酸化させたもので黒っぽい外観をしています。放射率は0.75~0.8程度と推定され、ステンレスの酸化面とほぼ同程度の放射率をもち、実際の多くのワークに近い放熱特性であろうと思います。ただしセラミックや光沢のある金属などのワークでは放熱量がもっと低い値になるでしょう。

物体の温度に対する放熱量は狭い温度範囲で大まかに言えば下式で表されます。

 P≒kTn  P:放熱量[w/cm2] k:定数

この関係を実測し、まとめたのが下のグラフです。ただし指数nは一定ではなく、下図の青曲線のように温度とともに変化します。これは放熱が伝導,対流,放射を合わせた形で行われ、それぞれのnは伝導がほぼn=1,対流がほぼn=2,放射がほぼn=4となります。温度が低いほど熱伝導が支配的で、温度上昇とともに対流による放熱が増加していき、200℃~300℃あたりから急激に放射の割合が増加していき、500℃以上ではこの放射が支配的になります。そして数千℃以上では放射がほとんどを占める様になります。つまり高温域では指数nは4に近づいていきます。

[図-4]物体の表面温度に対する放熱量 (実測値の一例)

物体の表面温度
温度測定は700℃以上は光高温計(CHINO IR-U)を使用しました。700℃以下は熱電対φ0.32を使用しましたが、熱電対は一般的に温度が低めに測定される(測定点が熱電対線自身で冷却されるため)ので、700℃以上での光高温計の値と比較し、そこでの測定温度の両者比率が700℃以下でも適用できるとして低温域での熱電対の測定値を補正しました。
この補正値は+12%であった。この事より、物体の表面温度測定に熱電対φ0.32を使用した場合には約12%低めに測定されると推定します。熱電対での温度測定にはこの点を注意しなくてはなりません。電熱線コイル内に熱電対を入れるという方法もありますが、この場合は逆に真の表面温度よりも測定値が高めにでると思われます。

物体の表面温度2

[図-5]物体の表面温度に対する放熱量 (実測値の一例)

物体の温度が上昇していくと、上図の様に急激に放熱が増加していきます。

その物体を目的の温度に保つ為には、その温度における温度放射その他の放熱量と同じだけの熱エネルギーを与え続ける必要があります。

例えば空中に保持された薄い板を加熱する場合、その放熱面積は表裏で計算しなくてはなりません。1400℃での温度放射は約 44[W/cm2]ですが、裏面を加えると約 88[W/cm2]の放熱となります。

しかしこれは放射率が100 %の場合(カーボンの板などが、これに近い)であり、実際の鉄板などは酸化面の場合でも放射率80%程度なので[図-3]の値よりも実際の放熱は少ないと言う事になります。

ただし放熱は放射によるものだけではなく伝導,対流その他による放熱も加わりますから、少なくとも上図の値程度で考えておいた方がよく、実際にはもっと放熱が大きい場合が少なくありません。尚、1200℃以下の場合は[図-4]に実測データがありますので、この値を使ってください。

つまりポイントヒーターで1400℃に加熱しようと思えば、約 90[W/cm2]程度以上のエネルギー密度を与える事になります。ただしここでも吸収率(=放射率)を考慮しなくてはならず、吸収率80%とすれば約110[W/cm2]程度に集光された光で加熱する必要があります。

そしてハロゲンランプを使ったポイントヒーターの場合、約110[W/cm2]のパワー密度が限界に近く、従って加熱できる温度の上限も1400℃程度が1つの限界になります。しかし小電力のポイントヒーターになるほど放射以外の伝導,対流による放熱の割合が大きくなり、例えば150 wタイプでは約1000℃までしか加熱できないのが実情です。ただし2個のポイントヒーターを対向させて配置し、加熱対象の表裏から加熱するようにすれば、上限はもう少し高くなります。

焦点位置でのパワー密度

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