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樹脂加熱の基礎知識-3 樹脂の種類-5 スーパーエンジニアリングプラスチック

スーパーエンジニアリングプラスチック

スーパーエンジニアリングプラスチック(以後SEPと略称) は、エンジニアプラスチックの機能を強化した樹脂です。
一部では「特殊エンプラ」とも呼ばれています。
SEPは熱に弱いというプラスチックの本質的な性質を改善した耐熱性の高い第三世代の合成樹脂です。
高耐熱性によって、可動部での耐摩擦熱性向上により、総合的な機械的強度も向上しています。
一般的な性質は、DTULは150℃以上で、引っ張り強度500kgf/cm2以上・曲げ弾性率25000kg/cm2以上です。

金属部品との比較

<<長所>>

素材自体が製品を軽量化できる
複雑な形状を精度良く成形加工し安価に製造できる
十分な強度を持ち、内装外装の複雑な形状を容易に作り得るため装置の小型化を可能にする
部品を一体化できるので部品点数を減らしコストダウンできる
錆びない
油がなくとも耐磨耗性に優れている
塗装が不要であったり塗装時も定着が良い
3Dプリンターで使用可能

<<短所>>

高温下で部品の強度が低下する
低温下で部品の強度が低下することや、
硬度が金属に比べて低いため耐磨耗性に劣る
太陽光に曝される環境では紫外線によって劣化する
溶剤・化学薬品・ガスに曝された場合も脆化する場合がある
自然界には存在しないベンゼン環構造を多く内包した分子構造を持つものも多く、微生物分解性に乏しい

◇非晶性SEP

1. ポリサルホン(PSF)

こはく色透明の樹脂。靱性、耐熱性、耐加水分解性に優れ、高温でも酸、アルカリ、熱水に対し安定だが、有機溶剤には注意が必要。耐クリープ性、低温特性、電気特性、難燃性、寸法安定性にも優れる。吸湿によって物性低下はしないが、気泡やシルバーの原因となるため、成形する前には十分な乾燥が必要。

2. ポリエーテルサルホン(PES)

こはく色透明の樹脂。耐熱性、耐加水分解性、難燃性、耐クリープ性に優れている。寸法安定性も良好。耐薬品性は良好で耐ストレスクラック性に優れるが、有機溶剤には注意が必要。

3. ポリアリレート(PAR)

透明性樹脂。現在、アロイ・コンポジット系が多い。PAR/PC、PAR/PET、PAR/PA、PAR/フッ素樹脂等のアロイが上市されている。耐熱性(Tg:195)、紫外線バリアー性、耐衝撃性、表面硬度、耐クリープ性、回復曲げ弾性に特徴がある。分子中にエステル結合を持つため、熱水やスチームには注意を要する。有機溶剤にも注意が必要。

4. ポリアミドイミド(PAI)

耐熱性(連続使用温度250)、耐衝撃性、耐疲労性、難燃性、耐摩擦摩耗性、耐薬品性、耐ストレスクラック性に優れる。電気特性も良好。

5. ポリエーテルイミド(PEI)

こはく色透明の樹脂。耐熱性、機械特性、難燃性、電気特性に優れる。有機溶剤には注意が必要。

◇結晶性SEP

1. ポリフェニレンサルファイド(PPS)

非常に耐熱性が高い(荷重たわみ温度260以上)。機械的強度、剛性、難燃性、電気特性、寸法安定性、耐クリープ性に優れる。耐薬品性は特に優れ、熱濃硝酸の他はほとんどの酸、アルカリ、有機溶剤に侵されない。耐熱水性にも優れる。充填材の特性が現れやすいことから、摺動性、接着性、導電性、超精密成形性、高熱伝導性、封止性等の性能を付与したコンパウンドが多数展開されている。スーパーエンプラの中では特にコストパフォーマンスに優れていることから、着実に使用量が増加している。靱性が低い、バリが発生しやすい、分子構造にイオウを含むため金型の腐食・摩耗が大きいという課題があるが、最近では改良グレードが開発されている。

2. ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

熱可塑性樹脂中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度240、荷重たわみ温度300/GF30%)。難燃性、低不純物性、耐熱水性、耐放射線性、耐薬品性、耐疲労性も非常に良好。成形温度は高くする必要がある。

3. 液晶ポリマー/液晶ポリエステル(LCP)

溶融時に液晶性を示す樹脂。流動性が極めて良好。剛性、強度、成形性、吸水率が低く寸法安定性に優れる。バリやヒケが比較的少ない。耐熱レベルによりタイプ1、2、3に分類される。現在市場で最も使用されているのはタイプ2で、荷重たわみ温度が220から280のもの。また、分子構造により全芳香族系と半芳香族系に分かれる。全芳香族系は高耐熱性、半芳香族系は薄肉流動性に優れるという特徴がある。異方性があること、接着性が悪いこと、ウェルド強度が低いことが課題。また、分子中にエステル結合を持つため、熱水やスチームには注意を要する。一般に高温で金属に付着しやすい性質があることや、300以上でも安定なパージ剤が市販されていないことから、パージ方法にも注意が必要。

4. フッ素樹脂

分子中にフッ素を含有する樹脂(PTFE,PFA,FEP,E/TFE,PVDF等)の総称。耐熱性、耐寒性、耐薬品性、耐熱水性、耐候性が極めて優れている。非粘着性、低摩擦性、高周波特性に優れている。

5. ポリエーテルニトリル(PEN)

熱可塑性樹脂中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度230、荷重たわみ温度330/GF30%)。強度は汎用エンプラの約2倍、難燃性、低不純物性、耐熱水性、耐薬品性、耐疲労性、耐クリープ性、摺動性も非常に良好。成形は通常のエンプラ対応射出成形機を利用できる。高価。

6. ポリイミド(PI)

有機高分子中、最高レベルの耐熱性(連続使用温度250以上)。難燃性、機械的強度、耐摩耗性、耐クリープ性、耐放射線性、寸法安定性に優れる。

SEPの熱的性質(代表値)

SEPの熱的性質(代表値)

DTUL:荷重たわみ温度
Tg:ガラス転移点
Tm:融点
PENはポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)の略称としても使用されています。

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