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遠赤外線加熱と近赤外線加熱の使い分け

遠赤外線加熱と近赤外線加熱の使い分け

ここでは温度放射を利用した赤外線ヒーターについて解説します。 温度放射とは物質を高温にしたときに、そこから放射される電磁波(広い意味での光)です。 温度放射以外の光加熱方法としてはレーザー加熱があります。

近赤外線ヒーターは一般的にハロゲンランプを使用し、2000~3150℃の発熱体から放射される光を利用します。 ピーク波長は約1μm(0.001mm )、0.5~3μm の範囲に分布します。 これは可視光をかなり含みますので、眼にまぶしい光です。 これについてはガラスに着色するなどの方法で可視光を減じる対策方法もあります。 しかし光エネルギーは減衰します。 また発熱体温度を2000℃程度またはそれ以下に設定すれば、さほどまぶしくはありません。

遠赤外線ヒーターとはセラミック,石英,金属酸化面などの比較的低温( 500℃~1000℃)の発熱体から放射される光を利用します。 ピーク波長は3~5μmで、1~15μm程度の範囲に分布します。 かすかに赤熱する程度であり可視光はほとんど含まないので、まぶしくありません。

赤外線加熱を採用される場合には以下の様な赤外線の性質を考慮して、遠赤外線ヒーターを使うか近赤外線ヒーターを使うかの選択をする必要があります。

遠赤外線はほとんどの物体を透過しないため、ごく表面(0.1~0.2mm)の加熱になります。 (この特性を利用して、ガラス加熱には多用されています。) 接着剤の加熱に遠赤外線ヒーターを使った例では、たとえそれが透明に近い接着剤でも表面が焼け、内部まではなかなか熱が伝わりません。 近赤外線ヒーターの場合には浸透(透過)して内部からも加熱されるため、内部から泡が出てきます。 従って、接着剤加熱用には近赤外線ヒーターでなくてはならないとされています。

各種ガラスの赤外線透過率

吸収率の確認

印刷した紙を加熱すると、遠赤外線ヒーターの場合には全体的に加熱されます。 近赤外線ヒーターの場合には印刷文字や写真の部分が強く加熱されて白紙の部分はあまり加熱されません。 近赤外線は被加熱物の表面状態(色など)により吸収されやすさの差が大きい、つまり加熱度合いにムラが出やすい傾向があります。

例えば近赤外線ヒーターで肉を焼くと、焦げ始めたところが黒くなるので近赤外線をよりよく吸収するようになり、さらにその部分が集中的に加熱されるという循環がおこり、局部的に強く焦げます。つまり同じ素材でも焦げ目がムラになりやすい。 遠赤外線ヒーターのほうが均等に焦げ目がつきます。 備長炭が適しているとされる理由です。

これはデメリットでもありますが、目的によってはメリットにもなります。 例えば部分的に加熱したい場合には、加熱したい部分だけを黒く塗装しておけば良い、などです。

近赤外線ヒーターは通常、通電開始後1秒間程度で使えますが、遠赤外線ヒーターは15秒~数分間かかります。

供給電力の放射エネルギーへの変換効率は、近赤外線ヒーターでは90%程度となり良好です。 遠赤外線ヒーターの場合は60~70%程度でかなり悪くなります。 赤外線にならなかったロスエネルギーは主に空気を温めます。

近赤外線ヒーター(ランプ)から出る可視光線は加熱に寄与しない、と勘違いされている人がいますが、可視光も吸収された光エネルギーは全て熱に変わります。

近赤外線は木材,紙,布,人体などの比較的淡色の物体に対しては一般的に吸収率が遠赤外線よりも悪くなりますが、ヒーター自身の変換効率を考慮すると差は少なくなり、更にヒーター自身の立ち上がりに要するエネルギーと時間のロスも考慮すると必ずしも遠赤外線ヒーターの方が効率が良いとは限らず、むしろ近赤外線(ランプヒーター)の方がエネルギー効率が良い場合が多いです。

更に高反射材で閉鎖空間を作り、その中で加熱する場合、高い総合熱効率が期待できます。 これは最初の照射で吸収されずに反射された光も壁面で再反射され、また被加熱物体に当たり再吸収されるという事を繰り返すために、総合すると高い吸収率となるものです。 この場合の総合熱効率ηは壁面の面積をS1,吸収率をD1とし、被加熱物体の表面積をS2,吸収率をD2とすれば

効率η≒S2×D2/(D1×S1+D2×S2)×(ヒーターの変換効率)

閉鎖空間とまではいかなくても、大きな反射板で被加熱物体を覆う様な場合には、上記に近い状況となり、高い総合熱効率になります。

これを「空洞加熱法」と呼びます。 詳細は弊社サイトの「空洞加熱法」を参照してください。
ヒーターの発熱体から放射されるエネルギー密度は近赤外線ヒーターが高く遠赤外線ヒーターは低い。 プランクの法則といわれ、その差は20~40倍にもなります。

分光放射エネルギー密度

集光ミラーで赤外線を一点に集めても発熱体の表面エネルギー密度以上には原理的に決してならないので、遠赤外線ヒーターではあまり高いエネルギー密度は与えられません。 (遠赤外線ヒーターは数w/cm^2程度。近赤外のハロゲンヒーターは100w/cm^2以上)

従って遠赤外線では急速加熱や高温加熱,スポット加熱は難しく、このような用途では近赤外線ヒーターが適しています。 工業用途ではタクトタイムやエネルギーコストが重視されるために、ほとんどの場合、急速加熱が求められ、工業用加熱に関しては近赤外ヒーター(ハロゲンヒーター)が有利です。

急速に加熱してかまわない場合には、できるだけ高いエネルギー密度を与えて短時間で急激に温度上昇させた方が電力消費効率が非常に良くなります。低いエネルギー密度で長時間をかけて温度上昇させる場合、目標温度に達するまでの被加熱物体からの放熱がロスとなるためです。急速加熱と低速加熱では必要電力量が数倍になることもあります

近赤外線加熱(ハロゲンヒーター)は遠赤外線ヒータの数十倍のエネルギー密度を与える事が可能なので、このような場合には高いエネルギー効率が期待できます。 目標温度に達したら必要に応じて電源を切ったり、パワーを下げて目標温度を維持するようにコントロールします。

ただし大きなエネルギー密度を与えて急激に加熱するのは、被加熱物の種類によっては適さない場合もあります。 例1.厚肉の食材を加熱する場合には表面だけが焼けて内部の温度が十分には上がっていない、 例2. 塗膜を加熱する場合には表面だけが乾燥して内部の固化が不十分、ということもあります。 このような場合には低いエネルギー密度で長時間かける必要があります。

遠赤外線加熱の場合にはもともとエネルギー密度が低いので、必然的に加熱に長時間かかり、熱伝導時間が長くいので、内部まで熱が伝わったのですが、料理で例えると、表面を「カリッ」と仕上げるのが近赤外線ヒーターで、「とろ火でじっくり」が遠赤外線ヒーターです。 近赤外線ヒーターでも電圧を下げてエネルギー密度を下げると同じことができます。

ごく表面でしか吸収されない遠赤外線に「物体内部に浸透して内部から加熱される」などという誤解が生れたのは、エネルギー密度が低くて加熱に時間がかかったのが原因と思われます。

弊社の実績的には多くの場合、近赤外線ヒーターの方がよい結果が出ますので、実験や経験により判断されて遠赤ヒーターを近赤ヒーターに交換される事例は多く存在します。 簡単な実験でわかることですから、まずやってみてください。 テスト機やテストラボは弊社にあります。

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