近赤外線加熱と遠赤外線加熱の使い分け

近赤外線加熱と遠赤外線加熱の使い分け

近赤外線の放射加熱にはハロゲンヒーターを使用します。約3000℃の発熱体から放射される電磁波の内、最大波長は近赤外線の領域の約1μmです。最大波長を頂点に凸型の放物線を描き短波長から長波長まで放射しています。
遠赤外線の放射加熱にもハロゲンヒーターの使用が可能です。それはハロゲンヒーターにも遠赤外線領域の放射が含まれているからです。グラフから物体温度が高い方が全ての波長において放射エネルギー密度が高いことから分かります。波長が長くなればその有利な側面も低下します。
ハロゲンヒーターも、出力を調整すればピーク波長を遠赤外線~近赤外線まで変えられますが、フィラメント温度を制御することは難しく、任意の温度(最大波長)に調整合わせてを出力することは難しいです。遠赤外線ヒーターは発熱体の種類によってそれが可能です。
結論として近赤外線加熱のハロゲンヒーターは、高温加熱や瞬間加熱に適しています。それは発熱体温度を高温にでき、立上り時間も遠赤外線ヒーターと比較して早い為です。遠赤外線ヒーターは発熱体温度が低い為ピーク波長と他の波長の差が緩やかです。この特性から、ムラのある物体の加熱や、高温では加熱できない物体に適しています。

近赤外線ヒーターを選択する加熱例

例1、金属の場合は、一般的に波長が短い放射の方が吸収率が高い為、ハロゲンヒーターが有利です。遠赤外線ヒーターでの加熱では波長の違いと密度の違いからある程度の温度には上昇しますが、ハロゲンヒーターの加熱温度までは上昇しません。

例2、ヒーターの外形寸法が同じ場合は、一般的に波長が短く高出力できるハロゲンヒーターが有利です。遠赤外線ヒーターでの高出力加熱がしづらく、ハロゲンヒーターの加熱温度までは上昇しません。

遠赤外線ヒーターを選択する加熱例

例1:黒い文字を印刷した白い紙を遠赤外線ヒーターで加熱した場合、比較的全体の温度が上がります。近赤外線ヒーターの場合は、黒い文字部分が他の白い部分よりも強く加熱され、加熱箇所にムラが出ます。この原因は色の違いによって赤外線吸収率が異なり、近赤外線ヒーターは発熱体温度が高く最大波長と他の波長の差が大きい為に起こります。

例2、塗料を塗った素材を遠赤外線ヒーターで加熱した場合、塗った塗料全体が乾燥されます。近赤外線ヒーターの場合は、塗料表面は乾燥しているが、内部は乾燥しきれていない状態が起こります。この原因は近赤外線ヒーターと遠赤外線ヒーターのエネルギー密度の違いです。当然、発熱体温度が高い近赤外線ヒーターの方が密度が高いので、早く乾燥しますが、瞬時に点灯するので表面と内部の差が出てしまいます。

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ランプから放射され物体に入射した光は、通常の不透明な物体では一部が反射され、一部が吸収されます。吸収した光が加熱に寄与します。物体から反射した光をドーム型の反射率の高い素材で覆うことで、物体から反射された光が再反射され物体に入射し、一部の光を再度吸収します、このサイクルを繰り返すことで短時間で効率の良い加熱が可能となります。ドーム型に物体を覆う方法が最良ですが、物体の周りを囲むだけでも効果があります。
この方法を「再反射加熱法」と呼びます。詳細は「再反射加熱法」のページを参照してください。

効率的に加熱するためには、過熱対象物がどの波長範囲で吸収率(放射率)が高いかとどの温度まで過熱対象物を昇温させるかがポイントです。例えば、石英ガラスは、紫外線、可視光、赤外線を幅広く透過する物質ですが、4μmを越える赤外線の透過率は0付近まで低下します。石英ガラスの加熱では遠赤外線波長が有利です。
全ての波長で吸収率が100%の理想的な物質を黒体と呼びます。プランクの法則により、物体温度が低くなれば遠赤外線方向に、高くなれば近赤外線方向に最大波長はシフトします。吸収率が4μmを最大波長とする黒体は451℃です。加熱温度が451℃の時に最大波長を4μmに調整すれば非常に効率的な加熱ができますが、451℃以上の加熱は出来ません。
黒体温度が高い程、最大波長時も含め全ての波長でも放射エネルギー密度が発熱体温度が低いものよりも高くなります。従って高温加熱では、物体温度が高ければ高いほど有利となります。ハロゲンヒーターの発熱体であるタングステンフィラメントの放射は黒体放射と大部分が一致します。すなわち、遠赤外線領域の加熱でも高温加熱の利用ではハロゲンヒーターが適していると言えます。

 

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